元都庁職員のイクロです。
この記事では、「公務員を辞めたい」「辞めようか悩んでいる」という方に向けて、実際に都庁から民間に転職した私の体験に基づくアドバイスを紹介します。
記事を読むことで、自分が公務員を辞めるべきか、辞めるとしたら何に気をつけるべきかがわかります。
公務員を辞めた理由
まずは私が都庁を辞めた理由ですが、結論から言うと、入庁した時に抱いていた思いを遂げることが難しいと痛感したからです。
元々大学生の頃にボランティアや社会貢献活動をしていた私は、その中で行政の役割の大きさを非常に感じていました。例えば、直接的な売り上げを産むわけではないけれど社会的に必要な事業を運営していくには、行政からの助成金は重要です。
そして、行政の役割が大きいのであれば、それを運営する一員となり職務に尽力することは、意義深いことではないかと考えました。
簡単に説明すると以上のような動機で公務員になることを決めました。
ですが、実際に働き始めると、想像していたものとのギャップに悩むようになりました。というのも、あえて単純化して言ってしまうと、自治体としての東京都が何をおこなうかは条例で定められており、一般職員はそれに伴う事務作業を淡々とこなすだけで、「どうすれば都政がよくなるか」と考えたり、それに基づいて行動を起こしたりする余地は無いと感じたからです。
特に私は小規模の出先に配属されましたので、日頃の業務は窓口での定型のやりとりや書類の整理、データ入力などで、内容そのものは非常に単純なものでした。
社会をできるだけ良いものにすることに貢献したいと思っていた私にとって、それができているとダイレクトに感じられる職務内容ではなく、入庁時の想いを遂げることは難しいと考えたため、退職を決意しました。
これは公務員の仕事への批判ではありません。なぜなら、仕事の高度さ・複雑さと仕事の重要性は一致するとは限らず、実際に私が担当していた仕事も、内容は単純だけれど税金に支出などにも絡む非常に重要なものであることにかわりなかったからです。
また、公務員の仕事が事務作業を淡々とこなすものであることは、ほとんどすべての公務員志望者は認識しているでしょう。つまり、実態をきちんと理解せずに勝手に間違ったイメージを持っていた私が悪かったのです。
なので、批判する意図はまったくありませんし、私は今でも東京都はよい職場だと考えています。単に自分とは合わなかっただけです。
公務員を辞めてよかったと思えるようにするには強い決意が必要
公務員を辞めて後悔しないようにするには、強い決意が必要です。
なぜなら、どんな職場に転職しても、公務員の時の方がよかったなと思うような面もほぼ必ずあるからです。
例えば、私は公務員の時は毎日定時で帰って有休も取り放題だったので、プライベートの時間を確保しやすい点ではあきらかに転職後よりも公務員の頃の方がよかったです。しかし、「新しい職場ではこういうことに尽力したい」という明確な目的があり、実際にそれに取り組めていたので、後悔はありませんでした。
公務員かそうでないかに限らず、どんな職場でも良い点と悪い点があります。なので、公務員を辞めて後悔しないようにするには、「たとえ公務員の頃より何かしら悪くなっても、それでもやっぱり転職したいんだ」と思える明確な理由と、それに基づく強い決意が必要です。
もし、「なんとなくつまらない」「なんとなく民間の方がやりがいがありそう」という理由で辞めてしまうと、もしかしたら後悔することになるかもしれません。
公務員を円満に辞めるにはタイミングが重要
もし、自分の中で「公務員を辞める」という覚悟が決まったら、具体的に辞める段取りを進めましょう。
退職する時は、できれば円満に辞めて、お世話になった方々にできるだけ迷惑がかからないようにしたいですよね。そのためには、辞めるタイミングが非常に重要です。
結論、人事異動があるタイミングで退職できるように事前に準備を進めるのがおすすめです。
今公務員として働かれている方ならおわかりになる通り、公務員の職場は平時での人の出入りは基本的にありません。年度が切り替わる時期など、決まったタイミングで異動が発生します。
その前提で考えると、本来であれば人の出入りが無いようなタイミングで退職をすると、自分が辞めた分の人員補充を組織がイレギュラーにおこなう必要が生じる可能性があります。
例えば、1年間はこの5人で担当する、という分掌になっていたとして、はじまって3ヶ月で1人辞めてしまったら、そのままだとあとの9ヶ月は本来であれば5人でやる仕事を4人でおこなうことになってしまいます。
これが現実的で無い場合、止むを得ず無理に人員を補充することになりますが、(私も詳しくありませんが)これはかなり面倒なことでしょうし、本来やらなくてよかったはずの対応です。
そうなってしまうと他の方に迷惑がかかるので、上述した通り、人事異動があるタイミングで退職するようにしておきましょう。そうすれば、あらかじめ1人辞めることを前提に異動も組まれるので、迷惑を軽減することができます。
公務員を辞めて後悔しないために
公務員を辞めて後悔しないようにするために、まずは「辞めるに値するだけの強い理由が本当にあるのか」をよく考えることをおすすめします。これにはいくら時間がかかってもいいと私は思います。たとえ丸一年悩んでいたとしても、間違った決断をしてしまうことに比べればはるかにマシです。公務員という大変恵まれた環境は、辞めてしまったら戻ってきません。
その上で、もし辞めることを決断した場合は、退職のタイミングにはできるだけ注意しましょう。人事異動の時期に合わせて辞めるようにできれば、職場への迷惑を軽減することができます。
公務員を辞める人はかなり珍しい印象があると思います。確かに割合は低いですが、「公務員」というくくりで考えれば、絶対数は意外と多いです。総務省の統計によれば、平成29年度の地方公務員の離職数は130,256人、このうち普通退職は40,676人です。
時間をかけて考え、その末に辞めることを決断した場合は、前を向いて進んで行きましょう。どちらの決断をしたとしても、同じ悩みを持った経験がある者として応援します。