元都庁職員のイクロです。
都庁の専門科目の試験は「10科目から3科目を選択」「記述解答式」とかなり独特な形式です。
どうやって対策したらいいのかわからないという都庁志望の方々も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事は私が実際の都庁に合格した時の具体的な対策方法について解説します。必要な論点数やおすすめの科目、効果的な暗記方法などを説明しますので、ぜひ参考にしてみてください。
都庁の専門記述対策では5科目80~100論点がおすすめ
都庁の専門記述は10科目(憲法・行政法・民法・経済学・財政学・政治学・行政学・社会学・会計学・経営学)の中から3科目を選択して解答する形式です。そして、各科目の代表的な論点が出題されることが多く、また過去の出題傾向などからある程度予想も立てられるため、科目ごとに20論点ほどを対策しておけば当たる可能性は高いです。
なので、20論点×3科目=60論点が対策の最低限のラインということになりますが、これだと「1科目でも外すと後が無い」という綱渡りをすることになるので、プラス1~2科目をサブとして10論点ずつくらい追加するのがおすすめです。
ポイントは、3科目の中で対策する論点を増やすのではなく、科目自体を増やすことです。20~30論点くらいの対策が済んだ段階で、出題確率が高い論点は基本的に網羅できており、それで外れたとしたら「予想がつかないニッチな問題」ということになります。そういった出題は対策論点をいくら増やしても当たる確率はそれほど上がりません。つまり、30論点を超えたあたりから「1論点増やした際の、当たる確率の増え幅」が飽和して、対策効率が落ちてしまいます。したがって、科目を広げる方が望ましいということになります。
ちなみに実際に都庁の合格経験がある私の場合は、メインの3科目を20~30論点、サブの2科目を10~15論点くらい対策しました。なので、合計で約100論点くらいやったことになります。
都庁はどちらかというと「厳しい足きりがある教養試験」と「暗記ではなく思考が問われる論文試験」の方で差がつきやすい傾向があるので、専門記述の対策にあまり時間を使い過ぎるのは危険です。バランス良く80論点くらいにするか、最大でも100論点くらいにとどめておきましょう。そのかわり、対策する80~100論点は完璧に書けるように繰り返し対策しましょう。
都庁の専門記述の具体的な勉強方法
80~100論点ほど対策するのが効果的だと解説しましたが、具体的にこれらを暗記するにはどうしたらよいでしょうか。もちろん人によって最適な方法は異なりますが、私は下記のやり方をおすすめします。
- TACやLECのオプション講座で出題予想と模範解答をゲットする
- 模範解答から、択一試験で答えとして要求されるような重要項目を抜き出して箇条書きにする
- 箇条書きを覚える(←文章をまるごと覚えるよりはるかに簡単)
- 覚えた箇条書きをつなげてまとまりのある文章を作ってみる
- 模範解答と見比べて、適度に参考にしつつ、自分なりの「重要項目が網羅されていて、かつまとまりのある文章」を完成させる
- 本番では誤字脱字には注意する(減点される危険性があります)
1. TACやLECのオプション講座で出題予想と模範解答をゲットする
まずは「これらを覚えておけばいい」という出題論点の予想と模範解答を手に入れましょう。TACやLECなどの大手予備校では、本科の他に都庁の専門記述対策に特化したオプション講座を開設していますので、独学の人もこれらには取っておいた方が無難です。
なぜなら、仮に取らなかった場合、「どの論点が出題されるか」という予想と、それらに対する模範解答を自分で用意することになり、膨大な手間がかかります。その時間は勉強にあてた方が有意義です。なので、少なくとも教材は手に入れるようにしましょう。
2. 模範解答から重要項目を抜き出す
記述試験は、文章全体としてひとまとまりで評価されるというよりは、「これは含まれていなければいけない」という重要事項をどれくらい書けているかを主な基準として採点されている可能性が高いです。
なぜなら、そうしないと採点の客観性を担保することが難しくなるのと、採点にかかる工数が膨大になってしまうからです。
であれば、ある論点を見たときに、「重要事項は○○と●●と△△と□□。」というふうに書くべき要素を明確に挙げられることが大事になります。
なので、模範解答を手に入れたら、まずは各解答について重要事項をピップアップしてみましょう。重要事項かどうかの判断は、「択一試験なら解答として求められるかどうか」を基準に考えればわかりやすいと思います。
3. 箇条書きを覚える(←文章をまるごと覚えるよりはるかに簡単)
重要事項をピックアップして箇条書きにしたら、それらの暗記に移りましょう。
「結局暗記しなきゃいけないんじゃん!」と思われるかもしれませんが、箇条書きを記憶するのは数百文字の文章全体をそのまま記憶するよりもはるかに簡単です。
また、どれくらい覚えることができているかも客観的にチェックできます(5個中4個できた、など)。
4. 覚えた箇条書きをつなげてまとまりのある文章を作ってみる
3.まで終われば、専門記述の対策はだいぶ済んだことになります。
しかし、試験本番では当然箇条書きではなく文章で解答することを求められます。なので、覚えた箇条書きの内容をつなげて、まとまりのある文章につむいでいく練習をしましょう。
事実関係さえ暗記できていれば、それらを使って文章をつくることはそれほど難しくないはずです。
5. 自分なりの「重要項目が網羅されていて、かつまとまりのある文章」を完成させる
自分で文章のかたちにしてみたら、それらを予備校の模範解答と比べましょう。そうすると、「ここはこういうふうにつなげればよかったんだ」「この部分でこの内容にも触れておいた方が良いんだな」など、かなり気づきを得られると思います。
その気づきを踏まえて、自分なりに「重要項目が網羅されていて、かつまとまりのある文章」を作り上げてみましょう。重要事項が網羅されていて、文章としてしっかりまとまっていれば、予備校の模範解答と完全に同じでなくても問題ありません。なので、これらの条件を満たすかたちで、自分が記憶しやすい解答を完成させましょう。
6. 本番では誤字脱字には注意する(減点される危険性があります)
これは事前準備ではなく試験本番での話ですが、誤字脱字には注意してください。減点対象になる可能性があります。
実際の採点基準は内部の人のみぞ知るところですが、大事な場面で誤字脱字をしてしまうと公務員としての資質を疑われてもおかしくありません。
ちなみに私は予備校の模試を受けたときに10点くらい誤字脱字で減点されて、それからかなり気をつけるようになりました。
社会学・行政学・政治学が王道
科目は純粋に得意だったり好きだったりするものを選ぶのが良いと思いますが、特にこだわりがなければ社会学・行政学・政治学は王道です。理由を以下で説明します。
内容がある程度重複している
これらの科目は内容がある程度重複しています。特に行政学と政治学は近しい分野なので、1つやっているともう片方はかなり進めやすいです。
経済学と違い文系でもとっつきやすい
経済学は理系チックな面があり、都庁志望者の過半数を占めるであろう文系にとってはとっつきづらいです。
それに対して、社会学・行政学・政治学はザ・文系といった雰囲気で、多くの人にとって取り組みやすい内容です。
民法ほど暗記量が多くない
法律系の科目もザ・文系ではあるのですが、民法に関しては暗記量がかなり多いです。他の科目の2倍近くあります。
たくさん暗記しても1題分の解答にしかつながらないため、民法よりも暗記量が少ない社会学・行政学・政治学の方が効率的です。
出題が比較的安定している
社会学・行政学・政治学は比較的マニアックな問題が出づらく、予想された論点から出題される期待値が高めです。
もちろんマニアックな問題に当たってしまう可能性はゼロではありませんが、確率で考えれば出題が比較的安定している科目を選ぶのは正しい選択でしょう。
経済学・民法は既習者でないなら避ける
上でも触れたように、経済学は理系的で、民法は暗記量が多いため、多くの人にとっては避けるべき科目です。
ただし、経済学部・法学部でそれらを専門に勉強したことがある人ならもちろん対策は容易なので、その場合は選ぶべきでしょう。そうでないなら、王道の科目がおすすめです。
意外と穴場な経営学
周りを見た限りでは、都庁の受験生の多くは社会学・行政学・政治学・憲法・行政法で対策していると思います。
経済学と民法は上で述べてきた理由から敬遠されがちですし、財政学も経済学と種類が似ています。そして会計学と経営学は割とマイナーな扱いで、あまり候補に挙がらないことが多いのではないでしょうか。
もちろんよく選ばれる社会学・行政学・政治学・憲法・行政法を対策するかたちでまったく問題は無いのですが、私としては経営学もおすすめです。
理由は、人間関係を扱うという点で意外と社会学と近い部分があり同時に学習しやすく、出題傾向を見てもそれほどマイナーな論点は出ないからです。
社会学・行政学・政治学はいわば社会系ですが、憲法・行政法はいうまでもなく法律系です。主観的な表現になってしまいますが、この2系統の科目の雰囲気は少し違うと言えるのではないでしょうか。社会学・行政学・政治学に足すとしたら経営学の方が意外とマッチするように個人的には感じます。
合格ラインのボーダーは「良・普・やや悪」程度
具体的にどれくらいできれば合格ラインなのかも気になりますよね。
正確な情報はもちろん公開されていませんし、年にもよると思いますが、おおむね3科目で「よくできた」「まあまあできた」「わからないながらもなんとか埋めた」が1つずつあるような状態が最低水準だと思われます。
なので、3科目とも完璧に書けなければいけないと気負う必要はありません。(もちろん、他の試験の対策に余裕があれば高得点を目指すのは良いことです!)
都庁の専門記述には足きりはない
都庁の専門記述試験には、教養試験と違い足きりがありません。なので、仮に3科目ともいまいちの出来栄えでも、教養試験と論文試験がかなりよくできていれば合格する可能性はあります。
とはいえ、比較的得点しやすい試験なので、最低でも「良・普・やや悪」のボーダーラインは取れるように対策することをおすすめします。
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