公務員の今後は暗い?将来性を元公務員が考える

公務員の将来性

元都職員のイクロです。この記事では、公務員の将来性を主に給料の面から解説します。

公務員は今後も将来性がある

日本では総人口が2004年をピークに減少をはじめ、少子高齢化が激しく進行する中、2036年には高齢者の割合が1/3にのぼると予想されています。(出典:内閣府

このように衰退の流れにある社会の中で、「果たして公務員の将来性はあるのだろうか?」「今から公務員になって、将来もしっかり給料をもらえるのか」と不安に思う方も少なくないと思います。

しかし、元公務員として私は公務員に将来性はあると考えています。もう少し詳しく言うと下記の通りです。

  • 公務員は中流の給料を維持できる点で将来性はある
  • ただし、それを享受できる公務員の数自体は少なくなる

つまり「公務員の正職員として働くことは現在よりもハードルが高くなる可能性が高いが、その中に入れれば世の中の中流は維持できる」という見解です。

そう考える理由を以下で解説します。

公務員の給料は今後も維持される可能性が高い

現在公務員の給料は民間企業の水準に合わせて決定されています。

特に、業種や組織規模が自分たちと近いところを対象に給料の調査をおこない、その数字に近いほどよいという発想で公務員の給料は計算されます。

例えば都庁の場合、「都内に所在する調査対象産業の事業所のう ち、企業規模50人以上で、かつ、事業所規模50人以上の11,235事業所の調査母集団から、1,282事業所」(出典:職員の給与に関する報告(意見))に対して調査をおこない、それを民間企業の給与水準とし、毎年それと都職員の給料水準の差分がほぼ無いことを確認しています。

このように、零細企業を計算から外し、高めの水準で給料が支払われている可能性が高い企業群に合わせにいくため、公務員の給料は世間一般の基準から多少上ぶれることはあっても、下回ることは基本的にありません。

問題は、これが将来も維持されるのかどうかです。

高齢化が進み生産人口が減っていけば、税収は当然乏しくなっていきます。その結果、公務員の人件費は今よりも削減していかなければいけないタイミングが来ることは想像に難くありません。

しかしそれでも、私は公務員の平均給料は維持される可能性が高いと考えています。

前提として、公務員の人件費は一人あたりの平均給料だけでは決まらず、それに職員数を掛けることで決まります。つまり下記の式です。

「一人あたりの平均給料 × 職員数」

その上で、人件費の削減は、一人あたり平均給料よりも職員数の方を下げられる可能性の方が高いと思っています。

そのため、この記事の冒頭で挙げた下記の結論になるのではないか、という意見です。

  • 公務員は中流の給料を維持できる点で将来性はある
  • ただし、それを享受できる公務員の数自体は少なくなる

公務員のリストラ

職員数を絞ることの方が比較的実現しやすいと考える理由は下記の通りです。

  1. 現在は仕事量に対して人が多すぎる状態だから
  2. 部門の一部を民営化することができるから

以下でそれぞれ見ていきましょう。

現在は仕事量に対して人が多すぎる状態

公務員といっても千差万別ではあるものの、国家キャリアをはじめとした少数をのぞき、おしなべて忙しくありません。

特に出先の事務所はやることが無い職員であふれているケースもあります。実際に私も東京都の職員として出先で勤務していた時はそのような状態でした。

また、ある程度忙しい部署であっても、効率化の余地は大いにある場合も多いでしょう。それは仕事のさばき方の問題というより、そもそものルールや仕組みが旧態依然としている面が少なくないからです。

以上のような状態を考えれば、効率化を図ることでもっと少ない人数で同じ仕事をこなすことは可能なはずです。

そしてこれは、実際に公務員として働いている人の多くが感じていることです。なので「人件費を減らす」という課題に対して、新規採用を絞ってその代わり少数で仕事を回せるよう効率化を図るという方向性は自然なものだと私は思います。

部門の一部を民営化することができる

過去にも実例として、郵便や郵便貯金、国立大学などが公営から民営化された実績があります。つまり、もともと公務員がやっていた仕事が民間に移されることはありえることです。

これを踏まえると、今の公営事業の中で将来的に民営化されるものも出てくることは十分考えられます。

そうなればそこで働く人も公務員ではなくなるため、人件費は税金でなく事業の売上から支払われることになり、その分だけ税の出費が抑制されます。

事業の民営化によって民間人になった場合、職を無くすわけではありませんが、公務員としての身分は失うことにはかなり衝撃を受けるでしょう。

これから公務員を目指される方は、「公務員は将来性があるが、そもそも公務員という身分自体が必ずしも保証され続けるとは限らない」という可能性は念頭に起きつつ、省内・庁内でより高度で専門的な仕事を中枢に近い場所で担えることを目指す意識が必要かもしれません。